愛知に入るまでの東海道は9割はトラックが通行している。
街灯はほぼない暗がりの国道。自転車のすぐ横を大型トラックがスピードを上げて追い抜いていく。先の方で渋滞していると、並んでいる無数の赤いテールランプがナウシカに出てくる怒り狂った王蟲の群れに見える。
オレ:「ありゃナウシカの王蟲の群れに見えるな」
Tスケ:「なんか怖いですね。東海道外れませんか」
オレ:「オッケー」
私はいつはねられてもおかしくないという意味で怖かった。
とりあえず安全な場所に停車して地図でルートを確認した。
後日、東京でTスケと再会した際に語らった旅のエピソードの一つだ。
本編に戻ろう
(*´▽`*)
スタートした公園から10時間以上漕ぎ続けてきた。今の時点でTスケに野宿という選択肢はない。
ユースホステルや宿を探したが、土地勘もなく22時を回っているため困難を極めた。刈谷の街をふたりで彷徨っていると、『サウナ』のネオンが見えた。
ふたり:「ここにしよう!」即決。
駐輪場に自転車を停め店に入った。荷物が多いためコインロッカーは二つ必要だ。看板は『サウナ』だったが湯船もあり、身体をキレイに洗って浸かった。数日ぶりの風呂。極楽浄土の世界。
風呂を出て広くてテレビがある休息スペースへ。リクライニングするふかふかの椅子で横になった。
「ふぅ」私はため息をついてつかの間の休息を満喫した。隣のTスケを見ると、秒で爆睡していた・・・。
寝るの早すぎ
(*´▽`*)
ホントすぐに寝れる奴なんだな…。
考えてみると先に進んでいるということは、Tスケとお別れする刻も迫っているということ。きっと明日には京都に着くはず。
Tスケの目的地は京都。オレはあわよくばどこかでフェリーに乗って沖縄に渡りたい(その時はそう思っていた)。
ほんのわずかな時間を共にしているだけなのに確かな絆を感じる。
同じようなマウンテンバイク。同じような大荷物。同じような方向に進もうとして偶然出会い、支え合っている。偶然は必然と何かで聞いたことがある。
この出来事は人生を生きる上でのヒントがあるように感じる。昨日会ったばかりなのに本当に不思議だ。お互いに行動したからこそ巡り合えたのは間違いない。
考え事をしながらまどろんでいると、すぐに朝が来た。身支度を整え6時過ぎにサウナを出た。まずは名古屋を目指そう。
走り始めると割とすぐに名古屋に着いた。駅前はビルが立ち並び、かなり都会だった。
駅前のひと際目立つビルに視線が行く。そのビルの屋上あたりに『ビルヂング』と、デカデカと掲げられていたからだ。
オレ:「ビルヂングってあんま聞き慣れない言葉だな…ビルヂング…」独り言のようにつぶやいた。
名古屋では先へ進むことを忘れ、かなり時間をつぶして遊んだ。お互いに都会っ子の血が騒いだか。
私は自転車屋でグローブとサドルにかぶせる尻パッドを購入した。
ふたりでご飯を食べてからショッピングをしていると、時計は午後3時になろうとしていた。
オレ:「やばっ。そろそろ行こうか」
Tスケ:「かなり遊んじゃいましたね」
オレ:「涼しくなってきたから距離を稼ごう」
ふたりは名古屋を後にした。
ここから京都までの旅路で、タイスケの能力が炸裂する・・・。
第8話に続く