チャリ旅 箱根の山越え 第2話

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2XX1年8月31日午後23時30分
私は愛車”アパッチ号”に乗り、鎌倉街道上大岡付近を江の島方面へ走らせていた。国道134へ出るには朝比奈峠を越えたほうが近いのだが、平坦な道の鎌倉街道をルートに選んだ。肌寒い割に汗がにじむ、蒸し暑い夜。

8月31日の出発時のメモにはこう記されている。

「さあ出発。何があるのかわからないし楽しいことばかりではないに違いない。ピンチの時にどうするか。それが大事だ」

国道134号線の辻堂付近。防砂のための松林を我が愛車アパッチは快調に疾走する。街灯はあるものの薄暗い。

ぶつかるっ💀

( ゚Д゚)!

不意に、歩道にうずくまった黒い人影がいきなり現れた。

とっさにハンドルを切って車体を倒しよけた。かなりのスピードで走っていたため、彼?の横数センチのところで転倒せずに何とか通過できた。

おそらく松林に住むホームレスが何かの理由でうずくまっていたのだろう。停まって声をかける選択肢はなかった。それくらい気分が高揚していた。

「出発して一時間でコケなくてよかった…」全身鳥肌。何気なしにハンドルを握りしめている腕を見ると、猫が興奮した時のようにすべての腕毛が逆立っていた。

「こうなるのは猫だけじゃないんだ…」とつぶやきながら前進する。

何より、ケガをさせなくてよかった。もちろん自分も。

(*´▽`*)

茅ケ崎市と平塚市を結ぶ『湘南大橋』を通過し、大磯に入ると「結構来たな。もう後戻りはできない」と感じた。

決意を新たにしたと同時に得体の知れない恐怖が静かに襲ってきた。

小田原で小休止しルートを確認した。

いざ、箱根の山越え

(・_・)

・・・雨がぽつぽつと降ってきた。嫌な湿気が塊降ってきた。

雨がやんでくれることを願う気持ち空しく、湿気の塊は大きく、そして激しくなるばかりだ。

西へ行くには少しばかり遠回りとなる東海道をはずれ、箱根新道と並行する県道に差し掛かったころには、バアアアアアっと激しく降ってきた。

箱根駅伝でおなじみのこの県道は自転車で越えるにはあまりにも険しく、クネクネ道で登坂角度はMAXだ。マウンテンバイクで漕いで登ることは不可能。野宿のために用意した荷物に、大量の雨がしみ込んだ重いアパッチ号をゆっくりと引きずりながら途中にあった鉄橋の下で雨宿りをした。道は激流の川。

ラフティングできそう…。

(>_<)

朝方となり辺りは少しずつ明るくなってきた。たまに通りすがる車のドライバーが怪訝な表情を私になげかける。無理もない。この嵐の中自転車で急坂を登るモノ好きはいないだろ…。「初日からこれかー☠」これから先のことを案じながらも小雨になったため、立ちはだかる急坂に向かってアパッチ号を再び引きずり始めた。

ようやく東海道と合流する交差点に着いた。

これから下りだっ!

(*´▽`*)

っと喜んだのもつかの間、下り始めてものの数分で芦ノ湖に着いた。時間は9月1日午前8時30分を指していた。すっかり雨はやんでいた。

小休止を入れながら地図を見て愕然。

またすぐ登りィっ!!

( ゚Д゚)!

走り出してすぐに険しい坂となったため、アパッチ号を引きずり登った。

「この道は沼津にピーナッツを運んだ時に通ったな」トラックドライバーだったころのことを思い出しながら1時間くらい登ると、下りの道が坂の向こうに見えてきた。

「どうせまたすぐ登りでしょ…」とつぶやいたが、坂の頂点に着くとそれが

純度100%の下り坂💛

(*´▽`*)

であることを理解した。

これを下れば静岡の街。

うおぉぉー

( `ー´)ノWOOOO

頂上で雄たけびを上げた

6時間は嵐の登り坂を引いていたため、下りは最高な気分だった。狂ったように叫び声をあげながら超スピードで下った。途中、ブレーキングミスでドリフトして死にそうになった。また猫のように毛が逆立った…。

しばらく下っていると、眼下に静岡県三島市の街並みが広がった。胸が熱くなり感動した。

登った時間の割に下りは

やはりあっという間

(*´▽`*)

に終わりを迎えた。

登るのは時間がかかり様々な困難やトラブルが起こる。だからこそ登った時は最高に気持ちいい。ただし下るのは一瞬。登り切ったら新しい山を見つけることが大切なんだ。

第3話に続く

おっくん

おっくん

3児の父。一度きりの人生。焦らず腐らず諦めず。
19年の教員人生に終止符をうち起業。”自然の息吹を身に纏う”子どもたちのアパレルブランドT-ockbayを立ち上げる。

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